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放送家・小林希の世界ひとり旅コラム 放送家・小林希の世界ひとり旅コラム

第5回 旅で見つかる好きなこと〜ネコ編

旅で見つかる好きなこと〜ネコ編

 うんと旅がしたくて、旅にのめり込んでいった学生の頃、私はカメラを持って世界のワンシーンを切り取ることが好きになった。大学で写真部に入り、旅にカメラを持っていくことは、当たり前のスタイルになった。もちろん、今から15年以上も前だから、大量のフィルムをバックパックに入れて、それはそれは重かった。それでも、帰国してから現像する瞬間の楽しみや高揚感を、今でも覚えているほどだ。
それから29歳で世界放浪の旅へ出たとき、私は新たに好きだと思える存在に出会った。それは、世界各国で暮らすネコである。一人旅をしていて、路上で寛ぐネコに出くわすと、どことなく寄り添って声をかけた。「あなたも、ひとり? この街はカラフルで綺麗だね」なんて。パチリとネコを撮っていくうちに、ネコの自由気ままな在り方に、どこかしら憧れのような感情を抱くようになった。同時に、「ネコが(外でのんびりと)いる街は、穏やかで、好きになることが多い」という方程式のような考えを持つようなった。
ネコがいる街や国はたくさんあった。主に、チュニジアやモロッコ、トルコなどのイスラム国家や、スペインやイタリアの郊外や島など、ちょっと田舎の町であることがほとんどだ。
トルコを旅したとき、あまりのネコの多さと、トルコ人のネコへ対する愛情や優しさが他の国と一線を画すほど(割合として)深いように思ったので、あるときイスタンブールで、タクシーの運転手に聞いてみた。「なぜ、トルコ人はネコを大事にしているの?」。街中には、人が残したご飯をネコにあげるためのボックスがあったり、カフェやレストラン、お土産物屋さんでネコにご飯をあげたり、平気で宿の中にネコが入ってきたりする。運転手はさも愉快そうに、「簡単な理由だよ。だって、ムハンマドがネコを好きだからさ」と言った。ネコが宗教上の理由であることに、そのときは面食らったように驚いた。

トルコにかかわらず、私なりにネコを通して見る世界は、どんどん線でつながっていった。写真とネコは、結果的にプライベートでも仕事でも人生の一部になっている。裏を返せば、旅に出ていなかったら、どちらにも出会えなかった可能性が高い。もちろん、ネコでなくとも、それがイヌであっても、鳥であっても、あるいは人間であっても、旅に出て「好きだなあ」と思える何かに出会うのは、人生という名の旅がとても豊かになる気がする。せっかくの世界一周旅。前向きに「好きなもの・こと」を見つけてみるのも、魅力的で貴重な時間だと思う。
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profile

プロフィール

小林 希
小林 希
1982年生まれ、東京都出身。旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。1年後帰国して、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』(幻冬舎文庫)で作家に転身。主に旅、島、猫をテーマに執筆活動をしている。また、瀬戸内海の讃岐広島に「ゲストハウスひるねこ」をオープンするなど、島プロジェクトを立ち上げ、地域おこしに奔走する。 著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』(幻冬舎)や『世界の美しい街の美しいネコ』『日本の猫宿』(ともにエクスナレッジ)、『週末海外』(ワニブックス)など多数。女性誌『CLASSY』で連載中。 現在世界60カ国、日本の離島80島をめぐる。

『 みんなで旅するオンラインサロン しま、ねこ、ときどき海外』(https://id.sankei.jp/tabicom/)
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バイオグラフィー

週末海外

そのパスポート、使っていますか?社会人になってから、海外旅行なんて、行けるわけない…。そう諦めていませんか?
土日に、3連休に、有休を使って4・5連休に行ける至極の海外都市を旅作家がご紹介!28の街で観たい、食べたい、やりたいことを抑えておけば週末だけでも、最高で濃密な旅ができる。

恋する旅 女、世界をゆく ――29歳、会社を辞めて 旅に出た (幻冬舎文庫)

29歳で会社を辞め世界放浪の旅に。結婚や出産という女の転機を迎える30歳を前に、自分らしく生きることを決めた。会社を辞めた夜、「旅で素敵な女性になるのよ! 」と言ってバックパックを背負い家を出た著者は、時に贅沢を楽しみながらも、各地で泣き、笑い、疾走する。やがて訪れた心の変化とは? 瑞々しい感性で描かれる新感覚旅行記!

世界の美しい街の美しいネコ

夏になれば50度にもなるというチュニジア中央部の古都ケロアン。南下して行けばサハラ砂漠だからか、乾いた風にはどこか砂が混じり込んでいる。美しい旧市街は白い建物が迷路のような道をつくりだし、太陽の光が当たればその道は目映くなる。目映い日差しのなか、ヒジャーブという布を頭に巻いたイスラムの女性や、チュニジア式ドアの前で昼寝している猫たちと遭遇すると、異国情緒が最高に高まる。とにかく猫が多く、道を曲がれば猫に当たるし、基本的にのんびり寛いでいる。ケロアンにはシディ・サハブ霊廟という7世紀に建てられた霊廟があり、現在はモスクや神学校を併設している。アラブ諸国の中でもっとも美しいと言われるほど、素晴らしいイスラミック芸術を堪能できる奇跡の街。その場所で1時間はうっとりと猫も芸術も鑑賞できるだろう。

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