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放送家・小林希の世界ひとり旅コラム 放送家・小林希の世界ひとり旅コラム

第6回 旅を仕事にする〜帰国後編

旅を仕事にする〜帰国後編

2012年の世界放浪の旅をした後に、私は旅作家としての道を歩き始めた。それまで、「書くことを仕事にしたい!」と思ったことは、一度もなかった。それよりは、書く人を支えて本を作る、編集者になりたかった。だから、20代を編集者として駆け抜けたことは、人生で一つの「なりたい職業」を叶えたことであった。
ただ、よくよく考えてみると、編集者というよりは、とにかくものづくりがしたかったのだと思う。それもきっかけは旅にある。学生の頃、旅先にいつも真っさらなスケッチブックを携えていき、文章を書いたり、チケットを貼ったり、旅先の絵を描いたり、旅人たちに連絡先を書いてもらったり、そんなふうに「一冊」を作って帰国することが好きだった。それが、自ずと「本を作る」ことに興味をもったのだ。
世界放浪の旅に出て、大きく変わったことといえば、働き方をふくめての生き方だと思う。どこかの会社に属するのではなくて、旅にかかわる仕事をしたいと思い、私ができるかもしれないと思ったことは、たった一つ、旅をテーマにして書くことだった。もちろん、学生時代から好きだった写真を撮ることも。自分の足で歩き、見てまわって、感じた世界を伝えたい。

その一歩が、世界放浪の旅の最後に立ち寄ったインドにあった。2週間ほど同じ街にいて、朝起きて、ヨガをして、それから一年間の旅のことを書くことにした。毎日続けていたら、一冊分の原稿ができあがった。それは、学生時代と同じように、真っさらなスケッチブックを作り上げて帰るのと同じことだった。もちろん、一年間分の記憶は定かではなかったけれど、日記を書いていたおかげで、それを振り返りながら原稿を書くことができた。また、膨大な旅の写真が、一枚一枚記憶を呼び起こしてくれる良いメモがわりとなった。

帰国後に、幻冬舎の編集者に原稿を持ち込んだ。後日、それは大幅な書き直しを指示されることになったけれど、出版することが決まった。本が書店に並んだときに、編集者に「書き上げたことが第一歩だね」と言われた。インドで、旅の原稿をワクワクしながら書きあげたあの日々が懐かしい。あのとき、私は。まだ何もみえない真っさらな「未来」に、必死で何かを描こうとしていたのだ。
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profile

プロフィール

小林 希
小林 希
1982年生まれ、東京都出身。旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。1年後帰国して、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』(幻冬舎文庫)で作家に転身。主に旅、島、猫をテーマに執筆活動をしている。また、瀬戸内海の讃岐広島に「ゲストハウスひるねこ」をオープンするなど、島プロジェクトを立ち上げ、地域おこしに奔走する。 著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』(幻冬舎)や『世界の美しい街の美しいネコ』『日本の猫宿』(ともにエクスナレッジ)、『週末海外』(ワニブックス)など多数。女性誌『CLASSY』で連載中。 現在世界60カ国、日本の離島80島をめぐる。

『 みんなで旅するオンラインサロン しま、ねこ、ときどき海外』(https://id.sankei.jp/tabicom/)
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バイオグラフィー

週末海外

そのパスポート、使っていますか?社会人になってから、海外旅行なんて、行けるわけない…。そう諦めていませんか?
土日に、3連休に、有休を使って4・5連休に行ける至極の海外都市を旅作家がご紹介!28の街で観たい、食べたい、やりたいことを抑えておけば週末だけでも、最高で濃密な旅ができる。

恋する旅 女、世界をゆく ――29歳、会社を辞めて 旅に出た (幻冬舎文庫)

29歳で会社を辞め世界放浪の旅に。結婚や出産という女の転機を迎える30歳を前に、自分らしく生きることを決めた。会社を辞めた夜、「旅で素敵な女性になるのよ! 」と言ってバックパックを背負い家を出た著者は、時に贅沢を楽しみながらも、各地で泣き、笑い、疾走する。やがて訪れた心の変化とは? 瑞々しい感性で描かれる新感覚旅行記!

世界の美しい街の美しいネコ

夏になれば50度にもなるというチュニジア中央部の古都ケロアン。南下して行けばサハラ砂漠だからか、乾いた風にはどこか砂が混じり込んでいる。美しい旧市街は白い建物が迷路のような道をつくりだし、太陽の光が当たればその道は目映くなる。目映い日差しのなか、ヒジャーブという布を頭に巻いたイスラムの女性や、チュニジア式ドアの前で昼寝している猫たちと遭遇すると、異国情緒が最高に高まる。とにかく猫が多く、道を曲がれば猫に当たるし、基本的にのんびり寛いでいる。ケロアンにはシディ・サハブ霊廟という7世紀に建てられた霊廟があり、現在はモスクや神学校を併設している。アラブ諸国の中でもっとも美しいと言われるほど、素晴らしいイスラミック芸術を堪能できる奇跡の街。その場所で1時間はうっとりと猫も芸術も鑑賞できるだろう。

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